潜入!ゲーム開発スタジオ調査隊#4【STUDIO WRITE SAVERS編】

公開日:2021/03/01

変更日:2023/02/03

\業界専門用語で会話OK!/

はじめに

皆さんこんにちは!
エージェントの嶋田です。

「潜入!ゲーム開発スタジオ調査隊」、第4回目となります!

今回からは、8つのゲーム開発スタジオそれぞれにフォーカスしてご紹介していきます!
第3回では、ゲームシナリオ制作を担当している『STUDIO WRITE SAVERS』に潜入!

どうやってゲーム制作に取り組んでいるのか、
どんなメンバーが働いているのか、
どんな環境なのか・・・など、

スタジオの中を一緒に見ていきましょう!

『STUDIO WRITE SAVERS』とは?

『STUDIO WRITE SAVERS』は、クリーク・アンド・リバー社(以下C&R社)が運営する、シナリオライティングに特化したゲーム開発スタジオです。
ゲームシナリオ制作をメインに、世界観構築・キャラクター設計・スクリプト・脚本の制作・声優のキャスティングまで幅広く手掛けています。『クリスタル オブ リユニオン』(©株式会社gumi)や『けものフレンズ3』(©株式会社セガ)など、様々な作品に携わっています。

開発現場に潜入!

現在はほぼ全員がフルリモートで勤務をしています。(2021年1月時点)
出社する場合は、『COYOTE 3DCG STUDIO(潜入!ゲーム開発スタジオ調査隊#2【COYOTE 3DCG STUDIO編】)』や『2DCG PlaNet Studio(潜入!ゲーム開発スタジオ調査隊#3【2DCG PlaNet Studio編】)』と同じく、C&R社東京本社の8階で業務にあたっています。

「WRITE SAVERS」の名前の由来は、
「シナリオやシナリオライターを守る」という意味が込められているそうです。
名付け親は日本を代表する脚本家の佐藤大さんです。 ライターが執筆だけで生計を立てるのは大変なため、才能あるライターたちを救っていきたいという願いからこの名前が付けられました。

『STUDIO WRITE SAVERS』についてクリエイターにインタビュー!

渡辺 真由美(わたなべ まゆみ)[写真右。以下:渡辺]
STUDIO WRITE SAVERS シナリオチーム チームリーダー。
C&R社には2016年から進行管理としてジョイン。現在はリーダーとしてチームをまとめる。

松本 久瑠美(まつもと くるみ)[写真左。以下:松本]
STUDIO WRITE SAVERS シナリオチーム ディレクター。
C&R社に中途入社し3年目。前職はゲーム企画会社出身で、C&R社が2社目。 WRITE SAVERSメンバー ~スタジオについて~

 Q.『STUDIO WRITE SAVERS』(以下スタジオ)のチーム構成を教えてください。

渡辺:人数は30名、男女比は半々くらいです。うち10名は外部へ客先常駐しています。
これに加えて、外部パートナーとしてご協力いただいているフリーランスの方が10名ほどいます。

 Q.実際にどんな仕事を請け負っているのですか?

渡辺:ソーシャルゲームが多いのですが、大型のコンシューマー/ソーシャルIPタイトルを担当することもあります。株式会社gumiさんの『クリスタル オブ リユニオン』では、シナリオ~メインの音声収録を『STUDIO WRITE SAVERS』で担当しています。他にはドラマCDの脚本や、海外翻訳文を綺麗に直すローカライズの案件などもあります。
また、「締切に間に合わないため手伝ってくれないか」という相談等、比較的納期の短い案件も多いですね。うちはシナリオ制作スタジオの中では人数が多い方なのでそういった案件もカバーができ、クライアントからは困った時にも相談しやすいと信頼を置いていただいています。

 Q.締切の短い案件も多いのですね!そうなると、現場は相当お忙しいのでしょうか…?

松本:もちろん忙しい時もありますが、制作進行のメンバーがスケジュール管理をして案件を適切に回してくれるので、一人一人に負荷がかかり過ぎないような仕組みになっています。

渡辺:シナリオが遅れてしまうと収録やスクリプトなど、後の制作工程にも影響が出てきてしまいます。ですので、締切の短い案件をいただいても、メンバーに無理はさせないようにしながら、締め切りに間に合うように調整しています。

 Q.スタジオの雰囲気はどんな感じですか?

渡辺:落ち着いた人が多いですが、多いのですが、ゲームやアニメなど趣味が合うとテンションが上がって盛り上がったりもします。メンバー同志の仲も良いチームです。また、外部パートナーで有名タイトルに多く関わってきた大ベテランの方がいて、冗談を振りまいて場を明るくさせたり、若手の相談に乗ってくれたりしています。長年ずっとシナリオで生計を立ててきた方なので憧れているメンバーも多く、頼れる存在がいて雰囲気も良いですね。

WRITESAVERS4  Q.スタジオの魅力はどんなところですか?

渡辺:シナリオライターとしてチームで働ける点です。自分一人で作業をしていると、自分の書いている文章が良いのか悪いのか分からなくなることがあるのですが、そんな時でも気軽に周囲に意見を求められる環境があります。また、C&R社の他のゲーム開発スタジオと同じく、客先常駐で憧れのタイトルに携われるチャンスがある点も一つの魅力です。

松本:やりたいジャンルで力を発揮できるチャンスが多いところです。前職では、自分のやりたかった女性向け案件を担当する機会が少なかったんです。しかし、このチームにジョインしてから「女性向けジャンルをやりたい」と言い続けていた結果、女性向けジャンルの案件を沢山担当させていただけるようになりました。今では、「女性向けは松本に任せれば良い」とまで言われています。色々な案件を請け負っているからこそ、自分の興味のあるジャンルで活躍できるチャンスが多いと感じます。

~採用について~

 Q.採用の際重視されているポイントはどこですか。

渡辺:将来の展望を聞くようにしています。例えば、「プロデューサーやディレクターになって企画をしたいから、ライティングだけではなく世界観を構築する経験も積みたい」だったり、「シナリオライティングで生計を立てていきたいから、今は様々なジャンルのシナリオを書きたい」だったり、将来像と現在の業務を結び付けて考えられているかを重視します。スキル面では、ジャンルの得手不得手は気にせず、文章の巧拙を見て判断しています。

 Q.文章の巧拙はどういうところから判断をするのでしょうか?

松本:私はライターの書いた文章をチェックする立場なので、自分がその方に仕事を割り振るとして、一緒に仕事ができるかということを基準にしていますね。他者の監修が入っていないポートフォリオを拝見し、その文章の癖を自分が監修してブラッシュアップできそうか、という観点から判断しています。

Q.どういう人物像を求めていますか?

松本:クライアントに指示されたことだけでなく、もう一段上を目指せる方です。案件ごとに、「ここはこうした方が良い」と汲み取ってくれる読解能力が高い方だと良いですね。

渡辺:ただ、うちのスタジオではパブリッシングはしていないため、作家性が強すぎる人は窮屈に感じるところもあるかもしれません。クライアントから引き続き仕事をもらえることの手ごたえや、難しい案件をこなしていくやりがいを楽しめる人が合うと思います。

~キャリアについて~

 Q.シナリオの中で、難易度が高い案件はどんなものになるのでしょうか?

松本:個人的には、キャラクターゲームや乙女ゲームでしょうか。キャラクターのイメージや、「AとBが絡むと尊い」のような作品を理解していないと分からない組み合わせなどがあるので、そこがズレているとクライアントから「違います!」と言われます。キャラクターへの深い理解度が必要になってくるため、非常に難しいと思います。

 Q.なるほど、シナリオライターは色々な知識が必要になってくるのですね。

松本:そうですね。案件に入ったら、必要なものは調べながら作業するため自然と知識は身についてきます。例えば、作品のテーマに合った映画を観ては、そこから雰囲気やセリフを学んでいます。SNSなどで「ストーリーが面白い」「このネタ使ってくれている!」などのコメントを見ると、頑張って勉強して良かったという気持ちになりますね。

 Q.メンバーのキャリアアップのために行っている取り組みはありますか?

渡辺:最近始めた取り組みですが、メンバーたち自身が書いたシナリオに対して、ベテランの外部パートナーからフィードバックをもらえるような場や、新しいジャンルに挑戦をするための勉強会を設けています。
また、今までやったことのないジャンルであっても思い切って任せてみることもあります。自分自身がやりたいものに携われるほうがテンションも上がると思いますし、そういう場合は初挑戦でも意外と上手くいくことがあり、スキル幅を広げるきっかけにもなると考えています。

~インタビュイーについて~

WRITESAVERS3  Q.松本さんのこれまでのキャリアについて教えてください。

松本:一般大学を卒業後、ゲーム等エンタメコンテンツの企画・制作をする企業に就職しました。
そこで、アドベンチャーゲームのシナリオを作成したり、アシスタントディレクターとしてゲーム開発全般に携わったりしていました。3年前にスタジオに入ってからは、シナリオディレクターとして業務にあたっています。

 Q.専門学校などではなく、一般大学からシナリオの道へ進まれたのですね。

松本:はい。前職で選考を受けた際、当時自分がやり込んでいたゲームについて話したら、丁度企業がその案件を抱えている最中だったが故に採用されました。私の場合はラッキーな例だと思いますが、ゲームについての知識は後から補うことが難しい部分のため、事前に持っている人は即戦力として採用されやすいのかなと。

Q.『STUDIO WRITE SAVERS』を知ったきっかけ、転職しようと思った理由は何だったのですか?

松本:「シナリオアカデミー」※に参加した際、C&R社のエージェントから声を掛けていただいたことがきっかけです。前職があまりに多忙な環境だったことや、開発だと限られたタイトルにしか関われないため様々な案件に携わってみたいと思ったことからスタジオへの転職を決意しました。

※シナリオアカデミー…かつてC&R社が開催していた講座。クリエイターの育成及びスタジオの認知のため、WRITE SAVERSのシナリオディレクターが無料でシナリオについて授業をしていた。現在は開催していない。

 Q. チームリーダーの渡辺さんのこれまでのキャリアについて教えてください。

渡辺:私は、印刷会社のスキャナーという仕事がファーストキャリアでした。しかし、ゲーム業界に入りたいという夢を諦めきれず転職して、コンシューマーゲーム会社の営業広報→複数のパソコンゲームソフトメーカーで広報、スクリプト、外注管理、デザイン業務.etcと経験をしてきました。私自身シナリオライティングの経験はほとんどなく、現在のチームでは進行管理として制作に関わっています。

 Q.沢山渡り歩いてきた中で、『STUDIO WRITE SAVERS』を知ったきっかけは何だったのですか?

渡辺:前職ではシナリオを読み込む作業も多く外注管理もやっていたので、既にC&R社にいた知人から「うちでシナリオチームの進行管理をやらないか」と声を掛けていただき、今に至ります。ちなみ私がジョインした時は、今のような形ではなく業務委託数名+エージェントの体制でした。

 Q.当時から今に至るまでの変遷が気になります。

渡辺:当時はチームというよりも、エージェントが持ってきた案件をそれぞれがこなす個のクリエイター集団という感じでした。そこから、ディレクターの下にライターを付けてクオリティーをコントロールできる体制にしたり、C&R社内の他の制作スタジオの組織を参考にしながらピープルマネジメントの体制を構築したりすることで、 一つのチームとしてまとまってきました。

WRITESAVERS  Q.お二人のこれからの展望を教えてください。

松本:C&R社の8つのゲーム開発スタジオを上手くまとめ上げて自社IPを作ってみたいです。現在はスタジオ間の交流が少し薄いため、距離を縮めて全員で一つのIPタイトルを作れたら良いなと思います。

渡辺:『STUDIO WRITE SAVERS』に所属しているメンバーを、今後どこに行っても通用する人材に育てたいです。ライティングのスキル自体もそうですが、年齢を重ねると交渉事などコミュニケーションの能力を磨くことが大切になってきます。マネジメントを通して、メンバーのクリエイティブの能力と関係ないところも伸ばしてあげたいですね。
イラストやプログラミングと違って、シナリオは簡単に書けると思われることもあります。しかしそんなに甘い世界ではなく、続けていくのは大変です。だからこそ、しっかり努力しているクリエイターをしっかりサポートできるスタジオにしていきたいですね。ひいては、クリエイターの地位を上げて、ちゃんと食べていけるようにしたいと考えています。

最後に・・・

締切の短い案件があったり、ジャンルが幅広かったりと、シナリオライティングの地力を付けるには打ってつけの環境だと思いました。一方で、スケジュールやクオリティーをしっかり管理する仕組みや、『STUDIO WRITE SAVERS』の名前の由来から、シナリオライターを守っていきたいという思いも強く伝わってきました。絶え間ないインプット・アウトプットで作品を作り上げるクリエイターの皆さんに、改めて尊敬を抱いたインタビューでした。

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