「DX人材ってどんな人のこと?」もう職種名に振り回される転職活動はやめよう

公開日:2021/04/15

変更日:2022/12/06

\業界専門用語で会話OK!/

「DX」というトレンドは採用の現場にも

「これからはDX」
「DX人材採用したいです」
「弊社もDXに取り組んでいて…」

最近、聞かない日はない「DX」という言葉。

DXとはデジタルトランスフォーメーションの略称で、ウィキペディアによると「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念であり、「企業がテクノロジーを利用して事業の業績や対象範囲を根底から変化させる」という意味合いで用いられている。

企業の中途採用でも「DX人材」のニーズが高まっている。
クリエイターに特化して取り組んでいる自分のところにも、採用支援の相談を多くいただく。
「そうか、テックを取り入れて事業構造を抜本的に変えるんだもんな。新しい人材ニーズは出て当然だよな」などと漠然と思いながら採用担当のお客様にヒアリングをする。
すると、けっこうな割合で直面する問題がある。

それはDX人材に求められるスキルの多様さと複雑さだ。

で、DX人材ってどんな人のこと?

少し前、Twitterでこんな投稿がバズっていた。

※このツイートの元ネタは以下の記事
DX人材のスキルチャートを作ってみた。

えっ…、えっ!?
めちゃくちゃ求めてきますやん!こんな万能な人って世の中に存在しているんですか!

我々エージェントは企業からいただいた採用ニーズ(どんな経験値を持っている人材を採用したいのか)が明確であればあるほど、候補者探しは具体的に取り組める。

例えばUIデザイナーであれば
「Figmaは触れないと通らないです」
「ユーザー●●人規模のToCプロダクトでデザインリード張ってるような人」
「アプリのUI設計経験は欲しいな」
などなど。それは企業によって異なる。

かといって企業ごとに探す人材が全く違うかと言えばそうではない。「UIデザイナー」の採用においてたくさんの企業のヒアリングを重ねていくと、ある程度の傾向が見えてくる。今の転職市場で求められているUIデザイナーのペルソナが具体的になっていくのだ。
そうやって、その職種のトレンドを自分なりに把握して、転職をお考えの方やキャリアに悩んでいる方にお会いしていく。

しかしDX人材は今のところそうはいかない。

企業によって採用要件がさまざまで、傾向がない。いやそもそも、そんな傾向を掴もうとしている自分がいけない。企業によって取り組む「DX」の定義が違う状態だ。そのフェーズや目的が違うのだから、採用人材に求める経験値が会社ごとに異なるのも当然だろう。自分はなんて愚かな考えをしていたのだ、と自らを責める。浅はかであった。
そんな状況なので、語弊を恐れずにやや乱暴な言葉でいえば「DXっぽいことをやってきている方」にたくさんお会いしている状態だ。得意領域もさまざま、肩書も職種名もさまざま、習得スキルもさまざま。
そうやって、企業が求める「DX人材」を探していく。

そういえば、独立行政法人情報処理推進機構(以下IPA)が2019年5月に公開した「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査」では、DX 推進において、6つの職種を定義している。

人材の呼称例 人材の役割
プロデューサー DXやデジタルビジネスの実現を主導するリーダー格の人材(CDOを含む)
ビジネスデザイナー DXやデジタルピジネスの企百・立案・推進等を担う人材
アーキテクト DXやデジタルビジネスに関するシステムを設計できる人材
データサイエンティスト/AIエンジニア DXに関するデジタル技術(Al• IoT等)やデータ解析に精通した人材
uxデザイナー 上記以外にデジタルシステムの実装やインフラ構築等を担う人材
エンジニア/プログラマ DXやデジタルビジネスに関するシステムのユデザインを担当する人材

出典:IPA「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査」

なるほどなるほど!
この6つはよく聞く呼称ではあるし、企業が欲しい人材像を深くヒアリングしていけば、この6つのどこかには当てはまるかもなあ、と思う。

だがしかし、本来その人が持つスキルや経験値に向き合い、社会の中で次の活躍の場を提示するのが転職エージェントの役割であり本質だ。やはりDX人材、職種、そういうワードに呪縛されてはいないだろうか。自分も、そしてもしかしたら社会全体も。

そう考えると「DX人材はどんな人ですか?」って、定義しないほうが良いのではないか。
だって業務範囲が広すぎるもん。

職種名に振り回されていないか

例えば「UXデザイナー」という職種。

求人票においてこの呼称はかなり認知されるようになってきた。一方で「UIUXデザイナー」みたいな表記も多い。その表記に問題があるわけではなく、求人票の業務内容をよく見るとほぼwebデザインやUIを描く業務のみであるというものがいまだにあり、「この業務UXの要素なくないですか?」と思う求人票も少なくない。それであれば「UIデザイナー」とか「webデザイナー」という表記にしたほうが、マッチング度合いも上がるのではないかなと思う。

DXに関わる求人もこれからさまざまな職域、業務内容が存在してくるだろう。

そしてそれに職種名をつけなければならないとき、IPAが示した上記6つの呼称でカテゴライズされることが多くなってくるのではないかと予測している。
でも、簡単にカテゴライズできないさまざまな経験値やスキルを持つ人がいるはずだ。得意とやりたいが異なる(CanとWillが違う)人もいる。
そんなクリエイターに出会ったときに、僕たち転職エージェントは、型にはまった提案ではない支援ができるだろうか。

職種名で求人を検索して出てきたものだけを案内するだけでは意味がない。

ITやクリエイティブの分野の仕事はこれからますます複雑化し多様化していく。職種名でその仕事を括ることが難しくなる。求人サイトの検索窓で職種名を入れただけでは、業務内容的にマッチしているのにこぼれ落ちてしまう求人がある。そういうものを取りこぼさないのがエージェントの介在価値のひとつだと思う。
そういう価値を発揮できるエージェントが一人でも増えればいいなと思う。

これからの時代、自らの職種に振り回されずにいることが、ハッピーなキャリア構築に繋がるはずだ。
だから、僕たちエージェントはクリエイターにも、求人企業にも伝えていかなければいけない。

「職種名に振り回される転職活動、採用はもうやめましょう」、と。

自分は何屋なのか問題を乗り越えて

「自分は何屋なのか」は、いろいろな経験値をつけてきたクリエイターをはじめ、ビジネスパーソンの多くが一度は持つ問いなのではないかと思っている。業務が複雑化しているし、特定の職種に当てはめられない。
でもなんか、求人サイトでは職種名を書かせられるし、職務経歴書には肩書きを記したほうがいいと言われるし。だからとりあえず捻り出す。自分もそういう経験をしたことがある。 自分が何者か分からないとき、自分が何屋さんなのか見いだせない仕事をしているときがある。

DXがトレンドのなかで転職を考え始めると、その自問自答はいよいよ本格的になってきて「これまでの自分の経験ってどこに当てはめられるんだっけ!?」みたいな気持ちになるかもしれない。しかしITやテック領域で経験を積んできたUXデザイナー、UIデザイナー、プロダクトマネージャー、マーケティング、データ分析、事業企画担当などなど、最前線にいたビジネスパーソンの方は、職種名では括られない新たな活躍の場が、これからの成長市場にきっとある。

「自分は●●屋です!」と言えるものがあること、つまりその分野のスキルを深めていくプロフェッショナル型のキャリアは、それはそれで素敵だし市場価値は高い。
一方で、何屋か分からないような経験値をつけてきた人でも、しっかり棚卸をすれば強みや武器が絶対に見つかる。それをひとつのワードに当てはめられるかどうかだけの違いだ。

いろいろなスキルや経験値を複数持っている人はDX分野、あるいはこれから道が創られていく産業分野においては、そのハイブリッドさこそが、武器になるはずだ。
世の中の技術革新はますます進み、クリエイターの皆さんの新しい活躍の場が社会の中でたくさん生まれるだろう。

これから出会うクリエイターの皆さんをご支援するときは、その職種名や「自分は何屋さんなのか」の問いに左右されずに、本質をとらえてお話をしていこうと思う。

この記事を書いた人

転職エージェント:川原 祥平
転職エージェント:川原 祥平

転職エージェント:川原 祥平

大学を卒業後、関西の広告代理店へ入社し、営業として求人媒体の広告販売や雑誌メディアの広告販売、SPツールの企画、提案、制作進行管理を4年ほど経験。クライアントは地元関西の企業や飲食店、美容室などがメインでほぼ新規での営業を経験。その後、クリーク・アンド・リバー社へ転職し、15年のキャリア。IT・Web、DX領域で活躍するクリエイターの転職支援、キャリアアドバイス支援などに従事。現在はマネージャーとしても活躍中。クリエイターからバイネームで仕事ができる、とれる(川原さんにお世話になりたい、川原に頼みたい)ようになるのが目標。
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