アニメ業界はなぜ低賃金?7つの理由とアニメ業界で年収アップする秘訣

公開日:2025/11/21

変更日:2025/11/21

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「大好きなアニメの世界で働きたい」と夢を抱いて業界を目指す人が多い一方、アニメ業界は低賃金や過酷な労働環境が話題になることも少なくありません。

中には昔ながらの厳しい労働構造をイメージされる方もいるかもしれませんが、近年は世界中で高まる日本アニメの人気と時代の流れが相まって、業界内に働き方改革や待遇改善の取り組みが確実に進んでいます。

この記事では、アニメ業界の低賃金の背景にある7つの理由を明らかにすると同時に、年収アップを実現するための具体的な方法やキャリア戦略についても解説していきます。この記事を通じてアニメ業界の現状を理解し、あなたの理想のキャリアを築くためにぜひ参考にしてください。

アニメ業界の平均年収と職種ごとの違い

アニメ業界の仕事の中でも、仕事内容や雇用形態、キャリアの段階によって年収には大きな差があり、また業界平均年収は他業界に比べて依然として低い水準にあります。

文化庁令和4年度メディア芸術連携基盤等整備推進事業の「アニメーション制作者実態調査2023」によれば、2023年時点でのアニメ業界全体の平均年収は約260万円と、日本の全産業平均(約450万円)を大きく下回っており、特に若年層や新人アニメーターの生活は厳しい状況です。
出典:文化庁令和4年度メディア芸術連携基盤等整備推進事業「アニメーション制作者実態調査2023」

また、アニメ業界は専門性が高い職種ほど年収も上がりやすい傾向にあります。ただし収入が安定するまでには数年単位の実績が必要であり、特に若手や下流工程では厳しい現実があることも理解しておきましょう。

以下の表では職種ごとの年収目安をまとめています。

職種

年収目安

主な業務内容

動画マン

150〜250万円

中割り(中間の絵)を描いて動きをなめらかにする。
新人が多く単価も低め。

原画マン

250〜400万円

動きの要となる主要な絵を描く。構図・演技表現力が求められる中堅職。

作画監督

400〜600万円

原画のクオリティをチェック・修正する。
作画全体の責任者的ポジション。

色彩設計

300〜500万円

キャラクターや背景の配色を統一・設計する。
作品の世界観を支える仕事。

アニメ撮影

300〜500万円

作画・背景・エフェクトなどをデジタルで合成し、映像として仕上げる工程。

背景美術

250〜400万円

背景の絵を描く専門職。
リアリティと世界観構築が求められる。

制作進行

250〜400万円

スケジュール管理・素材回収・スタッフ調整など制作現場の調整役。未経験者歓迎のことも多い。

制作デスク

400〜600万円

制作進行の上位職。全体の進行を統括し現場を円滑に回す。経験が重要視される。

絵コンテ

500〜800万円

演出意図を絵と文字で表現する設計図を作成。
作品のクオリティに大きく関わる。

デザイン

300〜600万円

キャラクターやメカなどの設定画を担当。
独自性と商業性が求められる。

プロデューサー

600〜1000万円

資金調達・企画推進・スタッフ選定など。
経営視点も求められる重要職。

監督

800〜1200万円以上

全体の演出・構成を統括する責任者。
キャリアの集大成的ポジション。

アニメ業界が低賃金になりやすい7つの理由

アニメ業界は世界的な人気や評価の高まりにもかかわらず、働く人々の報酬がなかなか上がらない構造的な課題が長く続いてきました。その理由は一つではなく、業界特有のビジネスモデルや雇用形態、歴史的な背景などが複雑に絡み合っています。

ここでは、アニメ業界が低賃金になりやすい主な7つの要因と近年一部の企業で進みつつある改革の動きについて解説します。

1.製作委員会方式で制作費以外の収益が還元されにくい

アニメ制作では「製作委員会方式」が一般的です。これは複数の企業が出資し、リスクを分散する仕組みですが、その代わりに著作権や二次収益の多くが出資企業側に集中します。
制作会社は、ヒット作品でもあらかじめ決められた報酬しか受け取れず、グッズや配信などの成功報酬は入りません。結果として、実際に手を動かしているアニメーターや現場のスタッフにまで収益が行き渡らない構造が続いています。

2.下請け・多重構造により利益を確保しづらい

アニメ業界の制作現場は、元請け・下請け・孫請けと多層的に分かれる構造で動いています。この多重構造によって中間コストがかさむと、最終的に現場で働くクリエイターに行き渡る報酬が限られてしまいます。

特に低予算作品や短納期の案件では、過重労働が常態化する傾向があります。現場の努力や技術力が正当に評価されづらいという課題が続いています。

▼一方、自社で企画~二次利用まで行うことで安定した経営基盤を確保する企業も

3.出来高制・フリーランス契約が多い

アニメーターの多くはフリーランス契約かつ出来高制での報酬体系で働いています。この形式では「描いた分だけ報酬が発生する」仕組みであるため、作業時間や労働時間に関係なく収入が変動します。

1カットあたりの単価が数百円というケースも多く、体調不良などで作業量が落ちると即座に収入に影響するリスクもあります。また、フリーランスであるために社会保険や労災の対象外となる場合もあり、生活の不安定さが長年の課題となっています。

4.法的保護の対象外になりやすい

フリーランスや業務委託の形で働くアニメーターは、労働基準法や最低賃金法の保護を受けられない立場にあることがあり、契約の内容次第で過酷な条件で働かされるケースも見受けられます。

加えて、発注元が資本金1,000万円以下である場合には「下請法」の対象から外れるため、不当に低い単価設定や、短すぎる納期に対して異議を申し立てるのが難しいという構造的な問題もあります。

しかし近年では、状況を変えようとする企業の取り組みも始まっています。たとえば、制作スタジオ「株式会社CloverWorks」では、スタッフの大半を正社員として雇用し、契約面でも労働時間や報酬の安定性を確保する制度づくりを進めています。フリーランスの立場でも作業量に応じて報酬が大きく変動する「完全出来高制」を見直し、実労働に見合う報酬体系への移行が一部で始まっています。
参考:日経クロステック(xTECH)「アニメの職人技もデジタル化で働き方改革」

5.初期から低価格制作が業界に定着

日本のアニメは、長年「低コスト・短納期・大量生産」という体制で発展してきました。その結果、低単価な制作が常識となり、制作費の引き上げや労働環境の改善よりもコスト削減が優先されがちです。

しかし、最近では一部の企業でこの慣習を見直そうとする動きもあります。たとえばCloverWorksでは、無理な納期を避けて、スケジュールに余裕を持たせる制作体制を整備し、定時退社が可能な環境づくりを実践しています。デジタル化の推進により、業務効率の改善も図られています。

6.人気職ゆえに労働条件が悪くても人が集まる

アニメクリエイターは、アニメが好きな人にとって憧れの職業であり、たとえ労働条件が厳しくても「好きだから働きたい」という志望者が後を絶ちません。このような志望者の多さは企業側にとって採用しやすさにつながる一方で、待遇改善の必要性を感じづらくさせている側面もあります。

情熱だけでは続けられない現実に直面して辞めていく若手も多く、慢性的な人材不足と高離職率という構造的問題にもつながっています。

なおアニメ制作スタジオの株式会社CA Soaでは、選考フローの中でスタジオツアーを実施しており、実際の作業環境や社内制度について応募者が事前に確認できるよう配慮されています。また、従来型の過剰な負担や非効率な進行体制を見直すため、制作フローへのDX導入に取り組むことで、より働きやすい制作体制の構築と優秀な人材の長期定着を目指しています。

7.新人育成にコストをかけづらい

制作会社の多くは、予算や人員に余裕がなく、教育担当者も不在のまま新人を現場に投入しているのが実態です。技術を学ぶ機会が限られているため、若手がスキルを習得する前に辞めてしまうことも少なくありません。

一部の制作会社では、共同研修制度やオンボーディング体制の整備など、育成への投資を始める動きも出てきており、今後の改善が期待されます。

アニメ業界で年収を上げるためにできること

アニメ業界で働く中で「生活が厳しい」と感じる方も少なくありません。特に新人や動画マンなど基礎工程を担当する職種では年収200万円を切ることもあります。

しかし、業界内で年収を上げていく道は確実に存在します。特に近年は、スキルや経験を生かしてポジションを見直したり、待遇の良い企業へ転職することで年収を上げる人が増えています。

ここでは、アニメ業界で年収を上げるための2つの方法を紹介します。

キャリアアップを見据えてポジションを見直す

年収を上げるには、まず自身のポジションを戦略的に見直すことが重要です。とくに、動画マンや原画マンといった作業中心のポジションから、より上流の工程やマネジメントに関わる役職へステップアップすることで報酬の増加が期待できます。

たとえば、作画監督や演出、制作デスクなどは作品のクオリティや進行全体に責任を持つ立場であり、1本あたりの単価も高く設定されています。作画監督であれば、実力や信頼が評価されることで他社からのオファーも受けやすくなり、安定した収入につながることもあります。また、絵コンテや演出といったポジションは、作品全体の表現やテンポに大きく影響するため報酬も相応に高めです。

またプロデューサーなどのビジネス系のキャリアを目指すのも一つの方法です。こうした役職は企画立案や予算管理、チーム編成、クライアントとの交渉など、作品全体の“運営”に関わる重要な役割を担います。制作現場での経験を活かしつつ、ビジネススキルを身につけることで、より高い報酬や安定したポジションに就くチャンスも広がります。

どの工程に自分の強みを活かせるか、現場での経験を将来的にどう活用したいかを意識することがキャリアアップと収入向上への第一歩です。

待遇の良い企業に転職する

もう一つの現実的な手段が、労働環境や給与体系が整った企業へ転職することです。近年では、正社員雇用を進めたり、制作現場の分業化によって残業削減に取り組む制作会社も増えています。

たとえば、制作体制を見直して22時退社を徹底するスタジオや、フレックス制を導入する企業、交通費・住宅手当などを完備するところも出てきており、同じアニメクリエイターでも環境によって年収や待遇に大きな差が生じています。

特に、デジタルに強みを持つ新興スタジオや、海外資本が入ったグローバル企業などは、待遇が比較的高めに設定される傾向があります。今の職場に不安を感じている場合は、視野を広げて転職を検討することでキャリアの幅が広がります。

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アニメ業界で年収アップ転職を叶えるには転職するのも選択肢

アニメ業界でステップアップを考えるなら、転職という選択肢は非常に現実的で有効な手段です。これまでに培った経験やスキルを活かしながら、あなたに合った職場やより良い待遇を求めて環境を変えることでキャリアの幅が広がる可能性があります。

ここでは、アニメ業界で年収アップを実現するための転職戦略や、具体的なアプローチ方法についてわかりやすく解説します。

アニメ業界で転職先を選ぶポイント

転職によって年収アップを目指す際には、企業の待遇面や成長環境をしっかり見極めることが大切です。

たとえば、固定給制度を導入しているスタジオや、働き方改革に取り組んでいる企業は、収入面だけでなく労働環境の安定にもつながります。また、制作スケジュールに余裕があり、休日出勤や徹夜作業が少ない会社であれば、長期的なキャリア形成にも適していると言えるでしょう。

さらに、業界内で実績のあるプロデューサーが在籍していたり、海外展開を視野に入れたビジネスモデルを構築していたりする企業では、報酬面でも高水準が期待できることがあります。

こうした情報は求人票だけでは判断しにくいため、次に紹介する転職エージェントを活用することで応募前に求人情報の詳細も確認することができます。

年収・賃金の条件交渉は転職エージェントを活用すると効果的

待遇の良い企業を選ぶだけでなく、どんな条件で働きたいかを明確にし、それをきちんと伝えることも、転職成功の大切なポイントです。とはいえ、年収や労働時間、働き方に関する希望を企業側に直接伝えるのは、なかなか難しいと感じる方も多いのではないでしょうか。

特にアニメ業界は現場重視の文化が強く、キャリアに関する相談や交渉が日常的に行われる雰囲気ではありません。そのため、「条件をうまく伝えられなかった」「納得できないまま入社を決めてしまった」といった声も少なくありません。

アニメ業界に強い転職エージェント「HIGH-FIVE」では、現場を深く理解したアドバイザーが在籍し、アニメ業界特有の雇用形態や報酬体系、キャリア構造なども踏まえたうえで、企業との橋渡しをしています。

たとえば、「作画監督にステップアップしたいけれど、どの会社で実現できるか分からない」「フリーランスから固定給のある職場に移りたい」といった相談にも対応し、非公開求人の紹介や条件交渉の代行、面接準備まで総合的にサポートしています。

まとめ

アニメ業界には「低賃金」「ブラック」といったイメージがありますが、その背景には製作委員会方式や多重下請け構造、出来高制といった業界特有の構造的な課題があります。

一方で、近年は世界的な日本アニメの人気を背景に、業界全体の注目度も高まりつつあり、働き方改革や待遇改善の動きが少しずつですが確実に広がっています。実際、働き方改革に取り組む企業や待遇面での見直しを進めるスタジオも増えており、アニメ業界の働き方は変わり始めています。

「アニメに関わり続けたいが今の給料に満足していない」「もっと良い環境で挑戦したい」と感じている方は転職支援サービスを活用して転職するのも年収アップ実現のひとつの方法です。

エンタメ・アニメ業界に特化した転職エージェントHIGH-FIVEでは、年収や待遇の条件交渉から非公開求人の紹介や面接対策などあなたの転職をトータルで支援しています。アニメ業界で本気でキャリアを築いていきたい方は、まずは気軽にご相談ください。業界の変化をチャンスに変え、あなたらしい働き方を見つけていきましょう。

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この記事を書いた人

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