「良い意味で“東映アニメーションぽくない”ものを作りたい」プロデューサーロングインタビュー

公開日:2025/12/26

変更日:2025/12/25

東映アニメーション担当のエージェントが直接選考対策!

日本で最初の本格的なアニメーション製作会社であり、「ワンピース」、「ドラゴンボール」シリーズ、「プリキュア」シリーズ、「デジモン」シリーズなど数多くの作品を手掛ける東映アニメーション。世界の子ども達と人々に「夢」と「希望」を与える“創発企業”を目指し、さらに多くの作品を生み出すため、異業種からのチャレンジも含めたプロデューサーのキャリア採用を積極的に拡大しています。

今回は、実際に中途入社で活躍している東映アニメーション株式会社 プロデューサーの高田伸治さんにロングインタビューを実施!東映アニメーションを選んだ理由や現在の担当作品、印象に残っているエピソードなどについて詳しくお話を伺いました。

長い歴史×できることの幅広さ×進化を続ける制作技術

―――それではまず簡単に自己紹介をお願いします。

高田さん
企画部でプロデューサーを担当させていただいています、高田と申します。前職はアニメーションの制作会社で、制作進行として現場で走り回って、それこそカット袋を持って完成まで追いかけるようなことをしていました。東映アニメーションには2020年の夏に中途で入社しました。

入社して最初にアシスタントプロデューサーとして映画「THE FIRST SLAM DUNK」に携わらせていただき、続いて「いきものさん」というショートアニメーションシリーズをプロデューサーとして初めて立ち上げから担当しました。その後、フジテレビ他にて放送される日曜9時の朝番組の担当に移り「逃走中 グレートミッション」「ゲゲゲの鬼太郎 私の愛した歴代ゲゲゲ」を担当した後、現在は「DIGIMON BEATBREAK(デジモンビートブレイク)」のプロデューサーを担当させていただいています。
DIGIMON BEATBREAKキービジュアル
―――前職からアニメ業界にいらっしゃったということですが、東映アニメーションへの入社前後でイメージの変化などはありましたか?

高田さん
東映アニメーションと言うと、やはり「老舗」「アニメ業界の大御所」「昔からある伝統的な会社」というイメージがありました。また、僕自身「デジモンアドベンチャー」や「ワンピース」「ドラゴンボール」などを観て育ったので、“子供の頃に観ていた作品を作っている会社”という印象もありました。

製作だけではなく企画から営業まで、IPの管理・運用も含めた全てを自社で行えるという点は、入社前から現在も変わらず東映アニメーションの強みだと感じています。最近フリーアドレスになりまして、企画、営業、管理部門が入り交じりワンフロアで作業しているので、各セクションがどんなことをやっているのか何となく把握することができますし、連携もしやすくなっています。
東映アニメーション高田さんインタビューギャップだったのは、老舗がゆえに保守的で決まりきった型がたくさんあるんだろうなと思っていたのですが、実際は「いきものさん」のような、アートスタイルも企画内容も営業的なこともこれまでにないようなことを0→1でやらせてもらえています。チャレンジを受け入れてくれるというのは嬉しいギャップでしたね。当然、チャレンジの手前で乗り越えるべき点は多々ありますが。

「THE FIRST SLAM DUNK」のバスケットシーンや「ガールズバンドクライ」など、CG技術の進化も入社前のイメージとはまた違う部分の1つです。最近の「ワンピース」も毎週話題になるほどのクオリティになっていて、“あの映像が実現できるスタジオ”という強みは実感します。制作としても色々なことができる会社ということですね。

中でも個人的に入社して良かったと感じるのは、やはり企画部でプロデューサーとして仕事をさせてもらえていることです。1つのタイトルに対して企画の立ち上げ、制作、宣伝、その後の二次利用まで見据えて、営業部門と連携を図りながら関われるので、とてもやりがいがあります。

―――ご自身が幼い頃に観ていた作品シリーズのプロデューサーとして担当されているというのも素敵ですよね。

高田さん
本当にそうですよね。子供の頃の思い出の作品に時を経て、しかも完全新作で携われるというのは、なんか不思議というか、感慨深いです。次の作品がデジモンだと決まって、僕に担当が回ってきてという感じなので……夢がありますよね(笑)。好きだったからこそのプレッシャーもあるのですが、やはりやりがいの方が大きいです。
東映アニメーション高田さんインタビューあと、現在デジモンを担当しているからこそ感じたのですが、シリーズの歴史が長いこともあってか海外への展開がすごく速かったんです。昨今のアニメビジネスは国内だけでなく、海外に向けた準備もしなければならないので、当社は世界各地に現地子会社がある分、そのあたりの連携がしっかりとあるんだなというのは実感しましたね。

―――日々のお仕事の中で、こだわりや大切にしていることはありますか?

高田さん
まず観てくださっている方々に対しては、自分自身、多感な時期に観ていたアニメから良い影響をもらったと思っているので、そこで受けた原体験のようなものを視聴者の方にも繋げていって、恩返しができたらいいなと思っています。今アニメは子どもだけが観るものではなく、大人も含めて幅広い方に観てもらえるようになってきたので、たくさんの方に自分が受けたような良い影響を感じていただける作品にできたらいいなと。

もう1つは、単に作るだけではなく、自分が「かっこいい」「イケてる」と思う内容を少しでも入れることができたら、こんなに嬉しいことはないし、頑張りがいがあるなと思います。

―――視聴者の方の反応はやはり気になりますか?

高田さん
もちろんです!基本はSNSですが、身近な人に感想を聞いたりもします。良い反応も悪い反応も、どちらも反応があるということ自体が有難いです。あとは、スタッフと「よくできたよね」みたいな会話があると良かったなと思います。放送が始まると常に“デジモン”とか“ビートブレイク”で検索しているので、仕事とプライベートの境目がわからなくなってついやりすぎてしまうんですが(笑)、でもそれが楽しいんですよね。
東映アニメーション高田さんインタビュー対社内で大切にしていることだと、「アニメ製作に“プロデューサーとして”携わるというのはどういうことか」というのを日々考えるようにしています。プロデューサーって、“プロデュース”にerがついただけなので、何をする人なのかが具体的にわかりづらいなと、僕自身やりながらすごく思うんです。

今のところ、「関係各所が動く際の指針となる人=プロデューサー」なのかなと考えています。現場にいないのに偉そうなこと言う人だな……と思われないか不安になるときもありますが、その分、色々なことに首を突っ込める強みがあると思いながら取り組んでいます。

あとは、自分だけでアニメを作れるわけではないので、コミュニケーションをおろそかにせず密に取るということを心がけています。前職の制作進行の頃、アニメーターさんから上がりをもらうためにあの手この手を尽くしました。そのときに「向こうが起こしたアクションに対してこちらがリアクションできていないと、それなりのものはもらえないんだ」ということを学んだんです。そういった経験が今の仕事にも生きているのかなと思います。

―――他にもアニメ会社はたくさんある中で、東映アニメーションを選んだ理由を教えてください。

高田さん
決め手の一つになったのは面談です。前職の話や好きなアニメの話はもちろん、僕が好きなサブカルチャーについての話ができたんです。そこでまず東映アニメーションのイメージが変わりました。また「中野にこんなでっかいビルがあるなんて、アニメ会社っぽくないな。ビジネス要素が強い会社なのかな」と思っていたら、制作現場のかなり深い話をすることができました。

東映アニメーションエントランスエントランスの大型ビジョンには最新作品のプロモーション映像が流れる

選考の過程を通して、サブカルのお話ができる方もいれば、業界歴の長い職人気質の方もいて、ビジネスの話も制作の話もできて、色々な人がそれぞれに合う強みを活かしている会社なんだと思いました。「ここなら自分の持っているものを活かせるかもしれない」と好印象に感じたのを覚えています。

東映アニメーションのプロデューサー求人>>

何を企画の強みとし、どう差別化するか。マーケティング的な嗅覚は重要

―――では、そんな東映アニメーションでプロデューサーとして活躍するために求められる要素とは?

高田さん
東映アニメーションには息の長いタイトルがたくさんあり、放送期間も長い作品だと1年以上です。1〜2クールのアニメとは作り方が違うため、また違った経験ができます。その上で、視聴者の方に「やはり東映アニメの作品は面白い」と言っていただけるために何をすれば良いかというのは、弊社のどのプロデューサーも常に考え続けていることだと思います。

またデジモンは日曜朝に放送されていますが、配信が普及した今「日曜朝だから観る」というわけでもなくなってきています。一方で、「日曜朝」というお馴染みの枠で放送できるのはめちゃくちゃ強みでもあります。その両輪のバランスを考える部分は求められるのかなと思いますね。

―――確かに……!ちなみに差し支えなければ、高田さんはどのように差別化を考えていらっしゃいますか?
東映アニメーション高田さんインタビュー高田さん
あくまで個人の考えですが、僕は中途で入った人間なので、“東映アニメーションネイティブ”ではないというか……いわゆる“東映アニメーションぽさ”は僕の中には正直ないんです。でも東映アニメーションという大きな看板は背負っている。その看板を背負いながら、「東映アニメーションってこんなこともやるんだ」みたいな作品ができたら、そこにフックが作れるのかなという気がしています。

僕は自分をひねくれた側の人間だと思っていて、それこそサブカルに頭からつま先まで浸かっていたような人間なので、それを逆手に取って良い意味で“東映アニメーションでありながら東映アニメーションぽくない”ことをやりたいと面接でも話していたのですが、もしかするとそこを強みと捉えていただけたのかもしれないですね。

―――有難うございます。アニメ制作の経験やスキルの面ではいかがですか?

高田さん
スキルという意味では、企画部の仕事に関しては、例え別業界から入ったとしても1年物のアニメをやれば一撃で覚えると思います。編集ツールのスキルなども自ずと必要になりますが、触っていればできるようになる実感があります。異業種出身ということそのものが周囲と違う視点であり、その人の個性になると思うので、僕個人としては全然活かせる経験なのではないかなと思いますね。

その上で、マーケティング能力がある方は即戦力になれる可能性が高いと思います。それが海外にまつわる内容だと、なお有難いですね。分析するのが得意な方、数字を集めて整理して、仮説から結論を出すといった思考を持っている方は強いと思います。もちろんプロデューサーには色々なタイプがいるので、感性型とロジカル型のどちらもあって良いと思います。
東映アニメーション高田さんインタビューアニメ製作って、僕はハードルがあるようでないと思っているんです。というのも、アニメを観て育ってきている方は多いですし、プロデューサーになりたいと考えるような人はなおさら、アニメの知識は既にインストールされていると思うんですよ。なので、「どういう企画が作れるのか/やりたいのか」を語れることのほうが大切かもしれません。うちには音楽業界出身のプロデューサーもいますし、現場の方にも前職が税金関係のお仕事だった方がいたりするので、異業種からのチャレンジは不可能ではないですし、まずは門を叩いてみてほしいです。

今までにないチャレンジングな企画も、若手の自分に任せてくれた

―――東映アニメーションのことがよくわかってきました!高田さんが実際に「東映アニメーションらしいな」と感じたエピソードはありますか?

高田さん
やはり企画も現場も含めて長年経験を積んでいる方が社内にたくさんいらっしゃるので、ファンとして当時観ていた作品を担当されている方からリアルに話を聞く機会があるのは役得だなと思います。長い歴史があるからこそのエピソードですよね。

それでいうと、「鬼太郎」のセレクション放送企画を担当させてもらえたのは個人的にすごく嬉しい経験でした。鬼太郎好きの著名人に好きな回を選んでいただき、前後に選者コメントをつけて放送するという少し特別な枠でしたが、過去作品を改めて今に蘇らせる機会になりましたし、長いシリーズの歴史をもち、昔から愛されている作品だからこその、なかなか他社ではできない取り組みだったと思います。新しいアニメの魅せ方の武器が増えましたし、いつものアニメ作品とはまた違う楽しさがありました。

また「THE FIRST SLAM DUNK」の仕事では、プロデューサーたちの作品にかける想いや熱量から「これがプロデューサーというものなんだ」という姿勢を学ぶことができました。そんな方々と数年単位の長い時間を、入社して最初の仕事で共にできたというのはすごく貴重な経験でした。

あと僕個人としては、「いきものさん」という作品が一番大きい経験でした。90秒のショートアニメをとあるアニメ番組のおしりの枠に放送するというのに加えて、TV放送に限らないYouTube等のSNSも含めたビジネスモデルとして作った企画です。これは後から聞いた話ですが、企画会議でプレゼン用の資料と映像を作って発表したとき、皆さん内心「何を見せられてるんだ」と思っていたらしいんです。確かに結構ゆるい作風というか、ノンバーバルアニメでセリフもなく、動きだけで表現するのがポイントになるタイトルだったんですけど、その空気が会議室みたいな独特の場だと伝わってなかったみたいなんですよね。

でも、初号試写の反応は良かったんです。僕はあいにく同席できなかったのですが、男女問わず笑いが起きていたらしいんですよ。東映アニメーションは初号試写を皆で観るという文化があるのですが、そこで完成したものを観てやっと「高田はこれがやりたかったのか!」と理解してもらえたそうなんです。新しいIP作りのチャレンジを、当時ぺーぺーだった自分に任せてもらえたのは本当に有難い経験でしたし、任せてもらえた分めちゃくちゃ頑張った記憶があります。

―――他のプロデューサーの方のインタビューでも、同じく「手を挙げれば背中を押してくれる」「スモールスタートを応援してくれる」と仰っていました!まさに、これが東映アニメーションの社風なんですね。


高田さん
確かに、SNSオンリーになりがちな90秒のショートアニメを“TVでやれた”というところが、1つ大きなチャレンジだったかもしれないですね。最初からYouTubeで流すだけでは企画としてシュリンクしてしまうので、なんとか伝手を辿って、TV局の方に「こういう企画を考えているんですが、どこか流せる枠ないですか」と提案するところからやりました。

今では「いきものさん」インスタのフォロワーも5万人くらいいますし、監督・脚本の和田淳さんが「いきものさん」で芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞されたんですよ。和田さんは商業アニメ畑というよりは、個人アニメーション作家の方なのですが、彼の仕事を世に出して有名にするのが裏テーマでもあったので、本当に嬉しかったですね。今でこそアニメのエンディングに個人作家さんをフィーチャーしたタイトルも増えてきましたが、少しだけ時代に先行したような動きだったように思います。
東映アニメーション高田さんインタビュー

個性を強みにできる環境。海外の反応を直接受け取る機会も!

―――高田さんが今目指している目標を教えてください。

高田さん
担当している「DIGIMON BEATBREAK」を多くの方に観ていただいて、企画として成功させることが今のところの大きな目標ですね。

ビートブレイクといえば……今年の8月、AnimagiCというドイツで行われたアニメイベントに「DIGIMON BEATBREAK」のパネル登壇のために参加したんです。実はドイツって、AnimagiCのエンディングで「Butter-Fly」(デジモンアドベンチャー主題歌)のドイツ語版を会場3000人で大合唱するのがカルチャーになっている程の“親デジモン国”なんですよ。

参加して初めて知ったのですが、現地ファンとコール&レスポンスで交流するお決まりの流れがありまして……コール&レスポンスなんかやったことないし、他の作品は声優さんも一緒に参加されていましたが、ビートブレイクはまだビジュアルとPVが発表されたばかりで、参加者は僕1人。現地担当者はやらなくても良いと言ってくれましたが、僕もデジモンを背負って来ている以上、「ここで日和るわけにはいかない」と覚悟を決めてステージに出ました。
東映アニメーション高田さんインタビューそしたらなんと、僕が登場した瞬間にドカンと客席が沸いたんです!もうすっかりハイになってしまって(笑)、「僕がデジモンと言うのでビートブレイクと返してください!」「デジモン!」と言ったら、3000人が「ビートブレイク!!」と返してくださって……リアルな反応を直接受け取れたことも含めて、海外の方にこんなに応援してもらえる作品に携われているんだということを改めて実感したイベントでした。今後も色々な方に応援していただけるよう、引き続き頑張っていきたいです。

―――胸が熱くなるお話を有難うございます……!それでは最後に、応募を検討している方に一言お願いします。

高田さん
僕自身、まさか東映アニメーションで働くことになるなんて思っていませんでした。アニメ畑で働いてはきたけれど「ちょっと違うよな」と思っていたような僕を受け入れて、色々なことを任せてくれる会社が東映アニメーションなので、ぜひ僕も“変わった人”と一緒に働きたいなと思います。

一芸が秀でている必要はありません。何か人とは違う思いを持っている人や、良い意味で常識に囚われない人は、そこを強みとして見てくれる先輩方がたくさんいます。個性を消すことなく自分のスタイルにして働きたい人と一緒に仕事ができれば、きっと楽しいし良いものを作れると思います。興味がある方はぜひ一度チャレンジしてみていただけたら嬉しいです。

記事に書ききれない生の情報はぜひ面談で!

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この記事を書いた人

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