価値観、志を共にする仲間たちと一緒にコトをつくっていきたい。 ~スマイルズ野崎様&スマイルズ松島様

公開日:2022/01/07

変更日:2022/12/24

\業界専門用語で会話OK!/

【プロフィール】

野崎 亙(写真右)
株式会社スマイルズ 取締役 チーフクリエイティブオフィサー
2011年株式会社スマイルズ入社。2015年から現職。各種新規事業開発のプロデュース、ブランディングなどを担当のほか、外部クライアントへのプロデュースやコンサルティングを牽引。

松島 さおり (写真中央)
株式会社スマイルズ 人事サポートグループ 採用チーム
2013年4月入社、同年11月人事部新卒採用担当に。経済産業省 クリエイティブ産業課への出向等を経て、現在は全事業部・職種の採用・育成等を担う。

渡辺 和宏(写真左)
株式会社クリーク・アンド・リバー社 執行役員 
クリエイター・エージェンシー・グループ マネージャー
2002年株式会社クリーク・アンド・リバー社入社。映像分野で活躍する派遣就業クリエイターを担当、また制作受託の営業に従事。その後2005年から人材紹介事業を担当。

はじめに

経済産業省と特許庁が2018年5月に発表した『「デザイン経営」宣言』では、「デザイン経営」を「デザイン的な思考を経営に活用して、企業のブランド力やイノベーション力を向上させ、国際的な競争力を高める考え方」と示しています。

それに呼応して、規模・業種に関わらず「デザイン経営」を経営戦略の中核に据え、ブランド力の向上、イノベーション創出に取り組む企業が増えています。

その「デザイン経営」実践のカギを握るのが「クリエイティブ人材」です。しかし優秀なクリエイティブ人材は非常に少なく、企業間で争奪戦が繰り広げられているのが現状です。

今回は、株式会社スマイルズ(以下スマイルズ)で、日本におけるデザイン経営を先駆的に実践し、多くのクリエイティブ人材を育ててこられた野崎様、および同社人事部採用チームで長年採用活動に携わってこられた松島様と、クリーク・アンド・リバー社(以下C&R社)で、クリエイティブ人材の採用において多くの企業を支援してきた執行役員 渡辺の鼎談企画を実施。

企業間の争奪戦が激しく困難を極めるクリエイティブ人材の採用現場で、人事採用チームはどのような戦略や工夫を行い採用しているのかを語っていただきました。

野崎 亙株式会社スマイルズ 取締役 チーフクリエイティブオフィサー

「何をやっているか」よりも「誰とやるか」が重要なときもある。

渡辺
まずは自己紹介からいきましょう。 私は2002年の入社以来、クリエイティブ・プロフェッショナル人材のために、最も輝ける環境で仕事をしてもらうためのサポート、独立支援に携わってきました。C&R社は、当初はデザイナーなどのクリエイター専門の人材紹介エージェンシーでしたが、最近は医師や建築士、会計士といったプロフェッショナル人材についてもご支援しており、現在、私自身はクリエイターと料理人の転職支援チームの責任者を担当しています。 野崎さんはどのようなキャリアを経ていまに至られたのでしょう。

野崎
弊社はスープストックトーキョーに始まり、ネクタイ専門店、海苔弁専門店など、多種多様なブランドを展開していますが、私自身は、新卒でイデー、その後デザインコンサルティング企業を経て、スマイルズには10年前に入社しました。様々な部門の部門長を歴任したのち、6年ほど前からブランディングの統括を担当し、今は大企業や行政、伝統産業などを含む、外部クライアントのプロデュースなどを牽引しています。これまでスマイルズが自社ブランドで培ってきた事業開発やクリエイティブのノウハウを社外に拡張していくような仕事が、ここ数年で9割程度を占めるようになりました。具体的には新規事業・ブランドの開発、CIの開発といったことのプロデュースなどに携わっています。

渡辺
キャリアは当初からクリエイティブ畑だったのですか。

野崎
いえ、大学は工学系でした。ただ、個人的な趣味の活動で、トラックの上にジャングルジムをつくって街中を走ったりといったデザインゲリラ活動を学生時代からやっていて、何かを創るクリエイティブなことには常に興味を持っていましたし関わっていたかったですね。デザインコンサルティングの領域は担当してきましたが、クリエイティブをメインの仕事として関わったのはスマイルズに入ってからですよ。

渡辺
そうなんですね。松島さんは?

松島
2013年の新卒入社です。就活時は、私はスマイルズをクリエイティブの会社という認識で見ていなかったですね。当時スープストックトーキョーはまだ分社化していなかったときですが、展開している事業はいろいろで、スープもあればジラフというネクタイのブランドやリサイクルショップもあるという、「何の会社か」はよく分からないけれど可能性に満ちた会社というイメージでした。内定から入社まで半年くらい間隔がありましたが、事業スピードも速いので変化も多く、入社時にはまたまったく違うことが始まっているかもしれないという未知の面白さを感じていました。代表の遠山のユニークな在り方にも惹かれましたね。 キャリアとしては、スープストックトーキョーの店舗勤務を経て、入社年の11月に人事部に配属、2015年より交換留職という制度で経済産業省のクリエイティブ産業課という部署出向し、約2年後に戻ってきてからは、ずっと人事部採用チーム一筋です。

渡辺
クリエイティブ人材の採用で苦労しているとか難しいと感じていることはありますか。

松島
クリエイティブ人材の採用に限ったことではないのですが、しばらく前まで「スマイルズ=スープストックトーキョー」というイメージが強くて、本当はそれだけではなくさまざまな価値を生み出して事業化している会社なのに、「スープの会社ですよね」という先入観で見られてしまっていて、説明して理解していただくことに苦労しましたね。

渡辺
その点は、今は払拭されているのですか?

松島
週一で中途採用説明会を開催していた時期もあったのですが、タッチポイントを増やして情報を届けることと、何をしている会社なのかしっかり言語化することが大事でした。サイトを充実させてパンフレットなどもつくって、採用ブランディングを強化したことで、広くコンサルティングを行っている会社という認知度も上がってきている感じはします。

渡辺
採用は自社完結ですか、外部のエージェンシーなどを使うことは?

松島
渡辺さんを前にこの場で言うのも何ですが、基本的には自社内での活動ですね。エージェンシーや媒体メディアには安易に頼らないという方針です。(笑)

渡辺
いえいえ、気にしないでください。それで採用できているのなら、使う必要ないですから。(笑)

松島
頼ってしまうと、自分の頭で考えなくなるという面もあるので、自ら企画したり出会いに行くスタンスを続けています。たとえばほかの会社さんと合同で採用活動したこともあります。UDSさんと合同で、「ハローワーカー」という採用イベントを行いました。

野崎
一見、「本当に企業の採用イベント?」というような採用イベントですよ。これは私の”働き方”に対する持論ですが、「何をやっているか」よりも「誰とやるか」が大事だと思っています。会社を説明して面接してという会社目線でイベントを行うのではなく、採用側、求職者側双方が選ぶ視点が入るような、現場の社員と求職者のマッチングイベント的なことをやったら面白いと。弊社の社員だけでは偏りがあるから、UDSさんのデザイナーや建築設計士も交じってもらいました。現場の社員が4~5人座ったテーブルをいくつかつくって、求職者はそのテーブルをグルグル回っていき、この人と一緒に仕事したいとお互いに思える人と出会えればハッピーという。

松島
イベントの最後に、求職者と現場社員の双方が、ラブレターのように“気になった人に想いを伝えるお手紙”を書くんですよ。相思相愛かもしれないし、片思いかもしれない。それが即採用に結びつくわけではないですが、もらった手紙を何度も読んだり、なんて返信しようとみんなで一緒に悩んだり、すごく時間がかかって非効率でしたけれど、自分たちが手を動かしている印象が強く残っています。どんな人と一緒に働きたいかをみんなで考える、この関係値が大切なんだと思いました。

野崎
C&R社さんはこういったイベントというか仕掛けも企画するんですか?

渡辺
私がお手伝いした会社の例で言えば、ハローワーカーほど柔らかいものではないですが、合同説明会はあります。例えば、コンシューマーゲームの会社AとソーシャルゲームのB社の合説。A社はB社に応募してくるような人材が欲しい、B社はA社に応募してくるような人材が欲しい、であれば一緒にやれば両方に興味を持ってもらえて両方に応募する可能性もあるということですね。
同じ会場でも個々に説明していたのでは何の意味もありませんから、一緒に行うコンテンツや仕組みづくりが必要ですね。

松島 さおり 株式会社スマイルズ 人事サポートグループ 採用チーム

渡辺
イベント以外に応募段階や選考段階などの採用プロセスのなかで工夫されていることは?

松島
スマイルズのクリエイティブチームの新卒採用で、逆面接というのをやっています。一般的な面接は、企業側が学生に一方的に質問をし、見極めて合否を出すというスタイルだと思いますが、それだと、「会社が来てくださいと言うから入りました」という関係値になりがちですよね。そうではなくて、あくまでも「自分が選んだ」という気持ちや「互いに選んだ」という関係性を選考プロセスのなかでつくりたかったんです。
ですから、面接官は学生さんで、弊社メンバーが求職者となる逆面接です。面接される側の私たち求職者も、経歴やアピールポイントを書いたESを用意します。

渡辺
ESの内容は会社の事業概要やスペックではなく、パーソナルなものなんですか?

松島
そうです。どこで生まれ、どこの大学で何を学び、どの部署で何をやってきたか、頑張ったプロジェクトや、自己紹介などです。ポートフォリオ的に会社紹介も渡しますが。それをもとに学生さんがいろいろと質問をして、私たちが答えます。選考なので、逆面接後に学生さんから理由も含めて合格・不合格を出してもらいます。不合格が出ることはレアケースではありますが(笑)。

野崎
最近は学生さんからしたら売り手市場なわけで、選ばれても行きたくなければ辞退すればいい。逆に、「選ばれてお願いされたから」で来られると関係値にズレが生じてしまう。だから学生さんにも選ぶ側の視点に立ってもらい、「この人たちと仕事するのなら入るのもありだな」いや、むしろ「入りたい」という共感という部分でつながる状況を醸成したいんです。

渡辺
これは最終面接ですか?

松島
いえ、最初の面接です。学生さんの人数が多いのでオペレーションとしては負荷がとてもかかります。
ですが、昨年やってみて気づいたのですが、この逆面接には副産物もあるんです。すべてオンラインで行っているので、例えば野崎が学生さんに面接されているとき、運営スタッフとして同じ部屋で控えている社員は、そこで野崎が何と答えるのか、普段の仕事では改まって聞くことができないような価値観などが聞けるんですね。「野崎さんそんなこと思っていたんだ」という感想もありました。

野崎
後ろに社員がいようと、面接されている側なのですから、素直になってしまうんですね。(笑)

渡辺 和宏 株式会社クリーク・アンド・リバー社 執行役員 クリエイター・エージェンシー・グループ マネージャー

同じ価値観、志を共にする仲間たちと一緒に何かをつくっていきたい。

野崎
渡辺さんはさまざまな求職者とお会いしていらっしゃると思いますが、ここ数年で求職者の変化はありましたか?

渡辺
5~6年前くらいから、会社の価値観や方針、ビジョン、ミッションを重視する求職者が増えています。以前は、業務内容や待遇、例えばデザイナーであれば、こういうデザインテイストの会社で働きたいとか、給与はこれくらいで残業は月何時間、昇進のステップはディレクターを何年務めてマネージャーにといったキャリアパスが説明できれば、だいたい応募の可否を判断する情報としては十分だったのですが、いまは、この会社の目指す方向性は、ですとか、ビジョンは何で、どういうカルチャーの会社ですか、ということをすごく聞かれるようになりました。
社会的な価値があるか、自分がやっている事業が社会にどんな影響を与えているか、ということを気にかけるようになって、その会社が社会にどんな良い影響を与えているのか、というところを重視する求職者が増えていますね。
ですから、いま採用広報がすごく大事で、どんなメッセージを求職者に伝えるのかというところに企業は時間やお金をかけていらっしゃる。

松島
すごくよく分かります。求職者に弊社を知ったきっかけとどうして応募したのかを聞いていると、きっかけとしては「スープがおいしかった」、「お店を利用して興味を持った」という方も多いのですが、会社について調べていくうちに、企業理念や出されているメッセージ、価値観に共感してという方が多くなってきていますね。中途だと、現在勤めている会社に大きな不満はないけれど、もっとやりがいを実感できる仕事をやりたいという人が増えていると感じます。

野崎
スマイルズには一度フリーランスになってから会社に入り直すという方がこの数年増えているんですね。理由は、人にもよりますが、チームメイトがいる中での仕事をまたしたくて、というのがあります。これは重要なポイントで、フリーランスはプロジェクトごとに都度仲間はいるけど、離散集合するわけですね。コアはあるんだけど、なんとなくよりどころがないというか。また会社に所属するというのは、収入的な側面もないことはないけれど、それよりは、なにか同じ価値観、志を共にする仲間たちと一緒に何かを企てたいという気持ちの面が大きいのだろうと思いますね。
稼ごうと思えばどうにかなるのだから自分で仕事を選んでやればいい、という考え方もある中で、会社に属す場合には、先ほど渡辺さんがおっしゃったような価値観を重視する傾向が出てきたのもうなずけますね。

渡辺
以前、「こんな人はスマイルズという企業が合わないかも?」と書いていらっしゃったサイトを拝見したのですが、あれが他の採用場面でもけっこう重要だと思っています。自社のいいところだけを伝えるとか、表面上のよいところだけを伝えて応募してきてくれた人をたくさん集めたところで、結局入社してもお互いに不幸になるだけだったりするんですね。合う人はこういう人、合わない人はこういう人と明確にメッセージを発信できているところはなかなか少ないです。すごくいいことだと感じています。

野崎
ありがとうございます。でも本当にその通りで、母集団は多くなくても一人ずつちゃんと深く理解しあえたほうがいいですよね。あの内容を読んで合わないと思った時点で応募するのはやめていただいたほうが、長い目で見ると双方のためになるはず。私たちは大前提としてスキルベースで採用していません。スキルが合うかよりも、まずは価値観に共感しあえるかを重視します。それがいずれ、お互いのためになるからです。

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HIGH-FIVE編集部
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